これまで、ビジネスとしてシステムのスペック(仕様)を書く仕事をしてきて、スペックの書き方にはコツがあるなあと思うようになってきた。
ちなみに、ここでいう、スペックは、システムをつくる上流工程での要件定義・基本設計で、それをもとにシステムを作ったり、あるいは、ベンダーにRFP(Request For Proposal)として提示して、見積もりをお願いしたりする。そして、要件定義・基本設計を大きく外さなければ、それに続く設計・実装もそれほど大きく外れることはない。言ってみれば、建物の設計図に相当するもので、作ってみたら、”柱が足りなかった”、”家が傾いていた”、ということがあってはならない。
それで、どうやってスペックを書くか、一言でいえば、”漏れをなくし、重複をなくす”だと思う。
これはコンサル用語でいうところ”MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)”であり、漏れなく、重複なく、は当たり前のことなんだけど、これが以外と難しい。結局のところ、何が漏れているのか、全体像が見えていないとわからないし、経験を積まないと、失敗するポイントも見えてこない。
どうやって漏れと重複をなくすか?その一つのアプローチとして、自分がいつも心がけているのが、証券アナリストをしているときに教わった”分解して考えるべし”という考え方だ。たとえば、ある会社の売上高が100億円だったとして、その100億円が、業種別(金融30億円、製造業70億円など)、セグメント別(コンサル10億円、システム開発60億円、物品販売30億円など、そして、この組み合わせによって粗利が決定される)に分解することができる。そして、その分解の粒度(金融であれば、そのうち、銀行、証券、保険など、さらに銀行であれば都市銀行、地方銀行、最終的には個社(MUFJなど)に帰着する)を上げれば上げるほど、その会社の特性、何が伸びて、何が落ち込むのか、おぼろげながらわかってくる。
これはスペックを書くときも同じで、結局、経営もしくは発注側は、”ECのシステム作りたい”など漠然としたリクエストが多い。その漠然としたコンセプトを漠然としたままでいくと、結局できるものも漠然としてしまう。だからこそ、分解して、分解して、分解する、その過程で、不必要なところを削り、必要なところをさらに深堀りする。これを繰り返すことで、漏れなく、重複なく(MECE)を実現できるケースが多い。もちろん、分解しすぎて、全く当てが外れることもあり、どこを捨てて、どこを深堀りするかの勘所を押さえるのは経験によるものだと思う。
いってみれば、このMECEは分解した後の結果であり、それ自体は目的じゃないと思う。そして、分解して、分解して、分解する、これが重要なんだと思う。