司馬遼太郎は、自分のなかで最も好きな作家の一人でもあり、自分の文体も彼の影響を受けているくらいの大のファンです。
で、先日、読んだエッセイ「江戸日本の無形遺産”多様性”」(ちくま文庫 明治国家のこと)が面白かったのでシェア。江戸時代、日本は300あまりの藩に分かれて、藩が”法人”として、様々なカルチャーを生み出した。
たとえば、薩摩藩であれば、物事の本質をおさえておおづかみに事をおこなう政治家や総司令官タイプを生み出し、長州藩は権力の操作が上手であることから官僚機構をつくり動かした。土佐藩は、官には長くおらず、野に下って自由民権運動をひろげ、佐賀藩は、着実に物事をやっていく人材を新政府に提供した。そして、この人材の”多様性”が江戸日本から引き継いだ最大の財産(無形遺産)という。これは慧眼だなあと思いました。
企業のダイバーシティもこれに近いと思う。会社が大きくなって、何百人と新卒採用するようになると、一人ひとりの個性を活かすというよりも、まっさらな新人に新人教育で自社の愛社精神を叩き込み、その結果、どこを切っても同じ”金太郎飴”になりがち。これは、あくまで一般論です。
自分の経験上、この”金太郎飴”は、会社が伸びているときはいいけど、一旦下り坂になると、”みんなとちがうことをやるのはよろしくない”という作用が働き、自発的に行動ができなくなるケースが多く、その結果、次の手が打てず、ゆでガエルになってしまいがち。
で、”金太郎飴”にならないように必要なのは、やはり、ダイバーシティ。大雑把に本質を捉えて突き進む人も必要だし、官僚機構といった仕組みを作る人も必要。作った仕組みに対して外から監視する人も必要だし、うまくその仕組みを運用する人も必要。
昨今、ダイバーシティというと、XX比率を上げるべしみたいな定量的な話が多いと思う。もちろん、定量的な指標も必要だけど、なぜダイバーシティが必要かという話も重要かと、司馬遼太郎のエッセイから思ったのでした。