江戸日本の多様性とダイバーシティ

4月 22nd, 2015 | Posted by admin in 経営 | 長橋のつぶやき - (江戸日本の多様性とダイバーシティ はコメントを受け付けていません)

 司馬遼太郎は、自分のなかで最も好きな作家の一人でもあり、自分の文体も彼の影響を受けているくらいの大のファンです。

 で、先日、読んだエッセイ「江戸日本の無形遺産”多様性”」(ちくま文庫 明治国家のこと)が面白かったのでシェア。江戸時代、日本は300あまりの藩に分かれて、藩が”法人”として、様々なカルチャーを生み出した。

 たとえば、薩摩藩であれば、物事の本質をおさえておおづかみに事をおこなう政治家や総司令官タイプを生み出し、長州藩は権力の操作が上手であることから官僚機構をつくり動かした。土佐藩は、官には長くおらず、野に下って自由民権運動をひろげ、佐賀藩は、着実に物事をやっていく人材を新政府に提供した。そして、この人材の”多様性”が江戸日本から引き継いだ最大の財産(無形遺産)という。これは慧眼だなあと思いました。

 企業のダイバーシティもこれに近いと思う。会社が大きくなって、何百人と新卒採用するようになると、一人ひとりの個性を活かすというよりも、まっさらな新人に新人教育で自社の愛社精神を叩き込み、その結果、どこを切っても同じ”金太郎飴”になりがち。これは、あくまで一般論です。

 自分の経験上、この”金太郎飴”は、会社が伸びているときはいいけど、一旦下り坂になると、”みんなとちがうことをやるのはよろしくない”という作用が働き、自発的に行動ができなくなるケースが多く、その結果、次の手が打てず、ゆでガエルになってしまいがち。

 で、”金太郎飴”にならないように必要なのは、やはり、ダイバーシティ。大雑把に本質を捉えて突き進む人も必要だし、官僚機構といった仕組みを作る人も必要。作った仕組みに対して外から監視する人も必要だし、うまくその仕組みを運用する人も必要。

 昨今、ダイバーシティというと、XX比率を上げるべしみたいな定量的な話が多いと思う。もちろん、定量的な指標も必要だけど、なぜダイバーシティが必要かという話も重要かと、司馬遼太郎のエッセイから思ったのでした。

リーンとフランチャイズ

4月 4th, 2015 | Posted by admin in 経営 | 長橋のつぶやき - (リーンとフランチャイズ はコメントを受け付けていません)

 ワークスアプリが15年に新卒を1000人採用するという、すごい決断だなあと思い、いろいろ考えるところがありました。

 かりに、給料ならびに会社負担法定福利費をあわせて一人当たり月額30万とすれば、1000名採用で月額3億円、年間で36億円、かなりの負担と思われます。

 自分の経験からすると、人を雇うのは難しくないけど、人材を活用することは難しい。で、難しいもっとも大きな要素はコミュニケーションコストが増えること。たとえば、一人の上司がいままで5人の部下を見ているところが、突然、大量新卒採用で一気に30人になると、おそらく、その上司は一気に5人から30人相手にしなくてはならず、そのためのコミュニケーションに関わるコストが一気に増える。

 このコミュニケーションコストで、自分が遭遇するのはシステム開発の現場。システム開発も、基本は人を投入するビジネスで、協力会社から人を投入すればするほど効率が上がると思いがちだけど、人を投入すると、コミュニケーションコストが増えて、プロジェクトマネジャーが把握できなくなるケースがそれなりにある。

 で、どうするか?たぶん、二つのアプローチがあると思う。一つは、少数精鋭で頑張るアプローチ。いわゆる、リーン開発といわれる分野で、一人が開発、テスト、企画など複数の役割を担うアプローチ。人をたくさん投入してコミュニケーションコストを上げるよりも、一人にたくさんの仕事をさせる。これは良さげにみえるけど、難しいのは、一人で何役もできる人は、世の中にそれほどいないこと、でも、そうしたデキる人材が何人かいればまわるアプローチ、自分の理想もこれです。

 もう一つは、マニュアル化。フランチャイズのアプローチがこれで、うまくいくエッセンスを抽出して、これを徹底的にマニュアル化する。そして、そのマニュアルに従って、オペレーションをする。売上を拡大するという点では、このアプローチは結構有効だと思う。

 で、リーンとフランチャイズどっちがいいか?

 これはどちらかがいいとはいえない。結局のところ、”仕組みを作ってレバレッジを利かす”という点ではフランチャイズのアプローチは優れているし、”人を活かす”という点ではリーンの方が優れている。

 思うのは、これを両方うまくできる会社が世の中に存在すること。仕組みを上手くつくりながらも、一人何役もできる人材がたくさんいる、こういう会社は強い、こういう会社を作りたいなあと思ったのでした。

  

関心をもつこと

3月 7th, 2015 | Posted by admin in 日々の思い | 長橋のつぶやき - (関心をもつこと はコメントを受け付けていません)

ある方からお伺いしたこと。”愛情の反対は何か?”

マザーテレサ曰く、”愛情の反対は、無関心”だという。

なるほどなぁ、と思いました。

誰かが困っているとき、サポートを必要としているとき、”無関心”を決め込む、たぶん、これは良くないと思う。もちろん、誰でも1日は24時間なので、あらゆることに”関心”をもって愛情を注ぐには限度がある。

でも、自分のできる範囲で、”関心”をもつ、すなわち、”愛情”を注ぐ、これは重要なんだと思う。どんな些細なことでも、より多くの人からの”関心”があれば、大きなモノになる。ビジネスも、まさにそうだと思う。

というわけで、おもったこと、新しいヒト、モノに出会ったら、”無関心”にならないこと。ま、もちろん、全部はできないけど、コミュニケーションをすることが大事なんだと思いました。

歩み寄ること

2月 11th, 2015 | Posted by admin in 経営 | 長橋のつぶやき - (歩み寄ること はコメントを受け付けていません)

先日、ある方からお話をお伺いして、なるほど、と思いました。

自分は全然知らなかったのですが、最近、プロレスが盛り上がっているという。

 で、なぜ、プロレスが盛り上がっているかと言うと、レスラーがお客さんに歩み寄っているからと。

 たとえば、プロレス公演が終わった後、お客さんとレスラーとの懇親の場所があって、レスラーからお客さんに対して、「最近どうっすか?また来てくれてありがとうございました」みたいな、やりとりがあり、レスラーは、そうした歩み寄りを全国規模で繰り返していると。ま、劇場で会えるアイドルにコンセプトは近いかもしれない。

 プロレスというと、オワコンとはいかないまでも、ちょっと古いイメージがあるかもしれない。でも、レスラーが歩み寄ることで、お客さんとしては、「また、次回、彼に会いに行こう」という気になる。

 それで、おもいだしたのが、先日、iPadの青空文庫アプリで、たまたま読んでいた中島敦の「山月記」。学校の教科書には必ず乗っている短編で、主人公は、自分詩を作る才能があり、「オレはスゴイ、イケてる」って思っていたものの、結局、誰にも歩み寄らない結果、虎になってしまった。

このプロレスの話と虎の話、言いたいことは同じだと思う。

 どんなすごいコンテンツでも、それを見て、聞いてくれるお客さんに歩み寄らなければ、結局、独りよがりになってしまう。

で、自分の理解では、これはまぎれもなく営業だと思う。どんなダサい商品でもお客さんに歩み寄って、お客さんのために尽くすことの方が、歩み寄っていないイケてる商品よりも良いと。

 というわけで、今度、プロレスにいってみようかなと思いました。

ニッチをきわめる

1月 11th, 2015 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (ニッチをきわめる はコメントを受け付けていません)

なるほど、と思った話。

先日、ひょんなことから、全然違う業種(商社)のマネジメントの方とお話する機会がありました。

彼曰く、左から右に商品を流す、いわゆる商社ビジネスはもはや通用しないという。だから、最近、強化しているのは、事業投資で、これだと思う会社に投資をして、自分たちのサプライチェーンに組み込む、これによって会社を大きくすると。

で、その投資先を選ぶ条件はバルク(大量生産)でないこと。バルクだと誰でも作ることができて、結局、価格勝負になってしまう。だから、バルクで作れないニッチ商品を作れる会社が絶対条件だと。で、ニッチの分野のシェアを上げることで競争力を強めると。

なるほどなあ、と思いました。とくに、ITの場合、難しいのは後者。基本デジタルなので、いくらでもコピーができる、で、コピーされると、結局、資本力がある大手が全部持っていってしまう。ということなので、難しいけど、バルクで作れないニッチに特化するのは重要だと思う(当たり前ですが)。

ニッチというと市場が狭いと言えるかもしれないけど、商社だったり、ビジネスパートナーとつながることで、いくらでも市場は大きくなると思う。あたりまえだけど、その当たり前をきっちりできること、実はこれが大事なんだなあと、帰りながら思ったのでした。

世界ハイテク企業ウオッチ ネットフリックス

12月 1st, 2014 | Posted by admin in お知らせ | 長橋のつぶやき - (世界ハイテク企業ウオッチ ネットフリックス はコメントを受け付けていません)

Screenshot of www.sbbit.jp

連載中の世界ハイテク企業ウオッチにプライスラインの記事を寄稿させていただきました。

【連載】世界ハイテク企業ウォッチ
世界最大のインターネットテレビ企業、ネットフリックスに立ちはだかる試練
http://www.sbbit.jp/article/cont1/28897

How Google Works

11月 11th, 2014 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (How Google Works はコメントを受け付けていません)

最近、読んだ本の中で、とても勉強になりました。

企業でマネジメントに携わっている人、組織を作っている人にインプリケーションがあると思う。

で、自分が、なるほどなあ、と思ったのが、 グーグルの目標管理システムOKR(Objective and Key Result)。

 OKRは、たとえば、こんな具合「ジュピター(プロジェクトのコードネーム)ではW個の新システムによって、X個の大規模サービスの大量トラフィックを処理し、稼働率Y%のときにレイテンシーZマイクロ秒以下を達成する。」(p302)

 もともと、インテルのCEOアンディ・グローブが導入したMBO(Management By Objective)に近い話で、個人、チーム、会社で目標を決めて、それを達成すべく一体となる。

これに近いモノに予算とか事業計画とかがある。

自分の仕事の多くはこうした予算とか事業計画を作ることで、自分の理解では、それは、企業の地図みたいなものだと思う。つまり、予算、計画がないと今どこにいるかわからない。

 ただ、問題は、予算とか事業計画に厳密であればあるほど、予算のための仕事、事業計画のための仕事と手段と目的が逆になってしまう。そして、行きつく先は、計画経済みたいにすべてトップダウンで決めた結果、現場が全く動かないことになってしまう。

ひるがえって、このOKR。トップダウンになりがちな予算、事業計画をボトムアップのアプローチで、自分たちが重要な分野で目標を設定するという点でよくできた仕組みだと思う。ただ、こういうのは、グーグルのような「スマートクリエイティブ」という一人一人の社員が尖っている会社だからこそできる仕組みかもしれない。

どう組織、ビジネスをつくっていくか、とても得るものがある本でした。

パーソナライズと経験のあいだ

11月 8th, 2014 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー | 長橋のつぶやき - (パーソナライズと経験のあいだ はコメントを受け付けていません)

最近、おもうこと。

最近は、あらゆる分野でパーソナライズが進んでいる。

たとえば、グーグルでは、検索履歴から、自分が次に検索したいものを自分の嗜好にあわせて、提案してくれる(パーソナライズ)。

検索する本人にとっては、「あ、これで検索しようとおもっていた」ということで、提案の精度が高ければ、良いことだ。

そう、デジタル化の進展でパーソナライズが進んでいるけど、世の中すべてがパーソナライズするのだろうか? 

先日、そんなことを考えては、「まあ、そうかもね」と、もやもやしていた。

で、先日、元ミュージシャンで気の合う仲間と話していて、こんな問いをぶつけてみた。

「音楽をライブで聴くお客さんって、性別も違えば、年齢も違えば、趣味・嗜好も違う、そんななかでどうやってお客さんを満足させることができるの?」

彼は、こう答えた。

「お客さんに自分の思っていることを問いかけをして共感してもらう。そして、熱意を伝える。それで、会場が一体になる。たとえば、矢沢永吉のコンサートに一回行ったら確実に共感できる。ビジネスとしたら、次の日、熱意が冷めやらぬうちにファンクラブの勧誘をするのがよい。」

なるほどなあと思った。

パーソナライズというのは、言ってみれば、”お客様第一主義”的な発想だと思う、すなわち、ユーザのことを考えて、ユーザが心地良いものを提供する。

そして、その対極にあるのが、このライブ。アーチストが”熱意”を伝えて、その熱意に観客が惹きこまれる。

たぶん、このライブは、”体験”ともいえると思う。

かつて、スティーブ・ジョブズは、自分の世界観がグレートだと信じて、シンプルな自分の世界観をiMac,iPhoneなどのプロダクトに託した。そのプロダクトには、彼の世界観しか投入されていないので、余計なことは何もできない、伝記によれば、彼はApp Storeさえも最初は反対したとか。そのおかげでセキュリティは保てる。それは置いといて、アップル製品が魅力的なのは、スティーブ・ジョブズの洗練された”体験”をユーザが追体験できるからだと思う。

この”体験”はパーソナライズというよりは、むしろ、”オレの世界観を味わってくれ”といったトップダウンではないと面白くない。ビジネスでよくあるのは、色々な人の話を聞いて、それを反映した結果、”妥協の産物”っぽくなってつまらない製品・サービスになってしまうというのは枚挙にいとまがない。

というわけで、結論。

たしかに、パーソナライズというのはいろいろ便利だし、これからもパーソナライズは増えると思う。

でも、全部がパーソナライズされるわけではない。

むしろ、パーソナライズ化が進んだ結果、”オレノ世界観を味わってくれ”という経験の方が新鮮というケースもあるし、こういうサービスももっと増えてもいいと思う。

そう、やっぱり、パーソナライズ万能ではなく、経験も重要ってことです。

マルチタスクとシングルタスク

8月 30th, 2014 | Posted by admin in 日々の思い | 経営 | 長橋のつぶやき - (マルチタスクとシングルタスク はコメントを受け付けていません)

最近、思うこと。

先日、何かの雑誌で旅館星のやのスタッフは、受付、客室清掃、調理補助など一つの業務だけではなく、マルチタスクをこなしているという話を読んで、なるほど、と思いました。

アジャイル的な考え方もこれに近くて、システム開発だけではなく、テストもやったり、設計もしたりと、ひとりが複数こなすマルチタスクなので、星のやもアジャイル的な組織と言えるかもしれない。

で、こうした一人が複数の業務を担当してまわすのは、清掃係、調理係と”係”に人を張り付けないため、少ない人数でオペレーションが完結し、結果的にコストが減るケースが多い。

じゃあ、どの会社もこうすればいいじゃん、と思うけど、これが結構難しい。やっぱり、組織が大きくなればなるほど、経理は経理、開発は開発とお互い話している言葉も違うし、結果的に縦割りになって、無駄の多いシングルタスクになってしまう。

でも、大企業でもマルチタスクを実現できている会社もあって、それは、社長の”組織を官僚化させない”といったリーダーシップによるものだと思う。前にもどって、おそらく、星のやもそうした危機感があるのだと思う。企業はトップ次第というけど、まさに、この例はそうだなあ、と昨日の帰路の途中思ったことでした。

IBMの息子

8月 26th, 2014 | Posted by admin in 日々の思い | 長橋のつぶやき - (IBMの息子 はコメントを受け付けていません)

自分のささやかな楽しみの一つがブックオフで100円の本を”発掘”することです。

今回の発掘は、IBMの息子 トーマス・J・ワトソン・ジュニア自伝(上下で200円でしたが)。上巻ではハーマン・ホレリスが発明したタブレットマシン(パンチカードを読み書きしてデータを記録するマシン)をアメリカではなくてはならないものにした創業者トーマス・J・ワトソンのマーケティング手法が息子の目から語られていてとても面白いです。

で、彼のポリシーは、”決定がくだされるところに電話しろ!社長に電話をかけろ!”(P119) そして、社長と面会して、社長がマシンに興味がなくても、IBMが編集した雑誌「Think」の定期購読リストに加えて、配布したという。そして、1930年代顧客数は3500社しかなかったのの、発行部数は10万部ちかく、IBMを応援してくれる牧師、議員などあらゆる人に配ったという。

このアプローチ、80年くらいたって、ネット全盛の今でも成立していると思う。その会社に興味がなくても、定期的によくできた雑誌を送付されると、”おぉ”という気になる。おそらく、ネットも同じで、最初はダメでも定期的に連絡することで、いつかビジネスにつながるということだと思いました。

これだけではなく、いろいろ得るものがありました。いまは絶版だけど、再版してもよいなあと思いました。