How Google Works

11月 11th, 2014 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (How Google Works はコメントを受け付けていません)

最近、読んだ本の中で、とても勉強になりました。

企業でマネジメントに携わっている人、組織を作っている人にインプリケーションがあると思う。

で、自分が、なるほどなあ、と思ったのが、 グーグルの目標管理システムOKR(Objective and Key Result)。

 OKRは、たとえば、こんな具合「ジュピター(プロジェクトのコードネーム)ではW個の新システムによって、X個の大規模サービスの大量トラフィックを処理し、稼働率Y%のときにレイテンシーZマイクロ秒以下を達成する。」(p302)

 もともと、インテルのCEOアンディ・グローブが導入したMBO(Management By Objective)に近い話で、個人、チーム、会社で目標を決めて、それを達成すべく一体となる。

これに近いモノに予算とか事業計画とかがある。

自分の仕事の多くはこうした予算とか事業計画を作ることで、自分の理解では、それは、企業の地図みたいなものだと思う。つまり、予算、計画がないと今どこにいるかわからない。

 ただ、問題は、予算とか事業計画に厳密であればあるほど、予算のための仕事、事業計画のための仕事と手段と目的が逆になってしまう。そして、行きつく先は、計画経済みたいにすべてトップダウンで決めた結果、現場が全く動かないことになってしまう。

ひるがえって、このOKR。トップダウンになりがちな予算、事業計画をボトムアップのアプローチで、自分たちが重要な分野で目標を設定するという点でよくできた仕組みだと思う。ただ、こういうのは、グーグルのような「スマートクリエイティブ」という一人一人の社員が尖っている会社だからこそできる仕組みかもしれない。

どう組織、ビジネスをつくっていくか、とても得るものがある本でした。

パーソナライズと経験のあいだ

11月 8th, 2014 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー | 長橋のつぶやき - (パーソナライズと経験のあいだ はコメントを受け付けていません)

最近、おもうこと。

最近は、あらゆる分野でパーソナライズが進んでいる。

たとえば、グーグルでは、検索履歴から、自分が次に検索したいものを自分の嗜好にあわせて、提案してくれる(パーソナライズ)。

検索する本人にとっては、「あ、これで検索しようとおもっていた」ということで、提案の精度が高ければ、良いことだ。

そう、デジタル化の進展でパーソナライズが進んでいるけど、世の中すべてがパーソナライズするのだろうか? 

先日、そんなことを考えては、「まあ、そうかもね」と、もやもやしていた。

で、先日、元ミュージシャンで気の合う仲間と話していて、こんな問いをぶつけてみた。

「音楽をライブで聴くお客さんって、性別も違えば、年齢も違えば、趣味・嗜好も違う、そんななかでどうやってお客さんを満足させることができるの?」

彼は、こう答えた。

「お客さんに自分の思っていることを問いかけをして共感してもらう。そして、熱意を伝える。それで、会場が一体になる。たとえば、矢沢永吉のコンサートに一回行ったら確実に共感できる。ビジネスとしたら、次の日、熱意が冷めやらぬうちにファンクラブの勧誘をするのがよい。」

なるほどなあと思った。

パーソナライズというのは、言ってみれば、”お客様第一主義”的な発想だと思う、すなわち、ユーザのことを考えて、ユーザが心地良いものを提供する。

そして、その対極にあるのが、このライブ。アーチストが”熱意”を伝えて、その熱意に観客が惹きこまれる。

たぶん、このライブは、”体験”ともいえると思う。

かつて、スティーブ・ジョブズは、自分の世界観がグレートだと信じて、シンプルな自分の世界観をiMac,iPhoneなどのプロダクトに託した。そのプロダクトには、彼の世界観しか投入されていないので、余計なことは何もできない、伝記によれば、彼はApp Storeさえも最初は反対したとか。そのおかげでセキュリティは保てる。それは置いといて、アップル製品が魅力的なのは、スティーブ・ジョブズの洗練された”体験”をユーザが追体験できるからだと思う。

この”体験”はパーソナライズというよりは、むしろ、”オレの世界観を味わってくれ”といったトップダウンではないと面白くない。ビジネスでよくあるのは、色々な人の話を聞いて、それを反映した結果、”妥協の産物”っぽくなってつまらない製品・サービスになってしまうというのは枚挙にいとまがない。

というわけで、結論。

たしかに、パーソナライズというのはいろいろ便利だし、これからもパーソナライズは増えると思う。

でも、全部がパーソナライズされるわけではない。

むしろ、パーソナライズ化が進んだ結果、”オレノ世界観を味わってくれ”という経験の方が新鮮というケースもあるし、こういうサービスももっと増えてもいいと思う。

そう、やっぱり、パーソナライズ万能ではなく、経験も重要ってことです。

データサイエンス基礎講座

11月 3rd, 2014 | Posted by admin in 日々の思い | 長橋のつぶやき - (データサイエンス基礎講座 はコメントを受け付けていません)

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これまで自分は、大学の研究者、証券アナリスト、経営管理と、様々なデータをもとに意思決定をしてきました。

どうやってデータを揃えて、どうやって意思決定するか、難しくもあり、エキサイティングな仕事です。

そんなことを、ひとりでも多くの方と共有できればという思いから、インプレスさんとセミナーをやらせていただくことになりました。

前提知識は必要ありません、ゼロからデータ分析をスタートします。

ぜひ、ご参加ください。

石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門

10月 1st, 2014 | Posted by admin in 日々の思い | 長橋のつぶやき - (石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 はコメントを受け付けていません)

石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門

ビジネスマンとして深く尊敬する岩瀬さんの初のご著書です。

自分の理解では、この本は、おおきくわけて3つの話をしています。

1.エネルギー(本書では、石油、ガスがメイン)はどのように発掘するか?⇒ 石油・ガス賦存の5要素
2.発掘したエネルギーをどのように流通するか? セブンシスターズ手動⇒OPEC手動⇒市場取引に
3.そうして日本に届いたエネルギーをどう活用すべきか?⇒エネルギー政策

1,2については、筆者のこれまでの商社マン人生でベネズエラからテヘランまでありとあらゆる場所に赴いた現場経験が裏打ちされて、リアルにその情景が伝わってきます。

帯には、「エネルギー界の池上彰さん誕生!」とあるけど、この本の面白さは池上彰さんというより、むしろ、「海賊と呼ばれた男」的な面白さだと思う。

つまり、ジャーナリストとしてある事象を冷静に観察するというより、日本の石油業界を背負う当事者、リーダーとして、これまで過ごした生き様がひしひしと伝わってきます。なので、次回はぜひ当事者としての回顧録を読みたいなあ、とも思います。

で、考えさせらたのは、3.エネルギー政策。

第1章のタイトル 日本の輸入ガスはなぜ高いか? で触れられているように、なぜ、日本の輸入ガスは高いか?

その理由としては、筆者は、「日本ではLNGは原油の代替燃料だった。したがって、価格を原油価格にリンクさせたのもこれまた当然だった。」(p30)

すなわち、シェールガスでどんなに天然ガスが安くなっても、日本だけ天然ガスの価格は原油価格にリンクしている。その背景には、「日本の電力会社は、販売電力価格を総括原価方式とよばれる「コスト積み上げ」で算定し、政府に許可を得ることになっている。」(p32)

その「コスト積み上げ」での電力価格を負担しているのは、いうまでもなく、我々日本国民。電力価格を本当に安くしたいのであれば、天然ガスの価格を原油価格にリンクさせなければ安くなる。ただし、その場合、電力会社が想定する“安定供給”ができない可能性があると。

で、どちらをとるか? やっぱり、これまで自分はこんなカラクリがあることは知らなかったし、エネルギーをどうすべきか、その背景をきっちり知ることが最初の一歩だと思う。

最後に、自分はいままで情報分野が長いので、タイトルの“エネルギー情報学”に引っかかってしまいました。

自分の理解では、情報とは、点(ヒト)と線(通信手段、電話、ネットなど)の集合。

そう考えてみると、ある点において、油田が発見され、また、ある点で流通する。そして、ある点ではそのエネルギーを利用する。その点で起きることをどう解釈するか、これはエネルギー情報学とも言えるのかもしれない。

すくなくとも、石油・天然ガスについては、ある点で起きている事象が包括的に理解できるので、そういう意味で“エネルギー情報学”の入門としてはよいと思いました。

世界ハイテク企業ウォッチ プライスライン

9月 5th, 2014 | Posted by admin in お知らせ | 長橋のつぶやき - (世界ハイテク企業ウォッチ プライスライン はコメントを受け付けていません)

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連載中の世界ハイテク企業ウオッチにプライスラインの記事を寄稿させていただきました。

【連載】世界ハイテク企業ウォッチ
世界最大の旅行代理店プライスラインとは?買収戦略に学ぶ、変化への対応力
http://www.sbbit.jp/article/cont1/28472

”待ち伏せ”というビジネスモデル

8月 28th, 2014 | Posted by admin in 経営 | 長橋のつぶやき - (”待ち伏せ”というビジネスモデル はコメントを受け付けていません)

自分が証券会社にいたころ、なるほど、と思ったことです。

機関投資家のビジネスは言うまでもなく、安い価格で株を買って、高い価格で売って、儲ける。

で、どうやって安い株を見つけるか? 

ある投資家いわく、それは”待ち伏せ”であると。

たとえば、東京証券取引所では3000以上の株式が上場されていて、日々、売買されている。

もちろん、トヨタとかソフトバンクといった東証一部で、時価総額が大きい企業は、一日に何百億円と売買されているので、こういったデカい銘柄でリターンを出すのは難しいという。

むしろ、投資家が注目していない会社を1年くらい前から目をつけておいて、ちょっとずつ買う、そして、何かのタイミングで注目されたときに売る。これが”待ち伏せ”です。

それで、この”待ち伏せ”先方、投資だけではなくて、ビジネスにも当てはまると思う。

ビジネスでも、流行を追うことは有効だけど、やはり、流行にはいろいろな会社がそれに飛びつく、だから、結局のところ、資本力がモノを言う世界で、大企業が優位になってしまう。

でも、モノになるかわからない、誰も注目しない分野を”待ち伏せ”する。そして、いつかその分野が注目されることで、果実を得ると。

ネタを仕込んだからといって、すぐヒットするとは限らない。だからこそ、”待ち伏せ”は有効な手段と思うのです。

IBMの息子

8月 26th, 2014 | Posted by admin in 日々の思い | 長橋のつぶやき - (IBMの息子 はコメントを受け付けていません)

自分のささやかな楽しみの一つがブックオフで100円の本を”発掘”することです。

今回の発掘は、IBMの息子 トーマス・J・ワトソン・ジュニア自伝(上下で200円でしたが)。上巻ではハーマン・ホレリスが発明したタブレットマシン(パンチカードを読み書きしてデータを記録するマシン)をアメリカではなくてはならないものにした創業者トーマス・J・ワトソンのマーケティング手法が息子の目から語られていてとても面白いです。

で、彼のポリシーは、”決定がくだされるところに電話しろ!社長に電話をかけろ!”(P119) そして、社長と面会して、社長がマシンに興味がなくても、IBMが編集した雑誌「Think」の定期購読リストに加えて、配布したという。そして、1930年代顧客数は3500社しかなかったのの、発行部数は10万部ちかく、IBMを応援してくれる牧師、議員などあらゆる人に配ったという。

このアプローチ、80年くらいたって、ネット全盛の今でも成立していると思う。その会社に興味がなくても、定期的によくできた雑誌を送付されると、”おぉ”という気になる。おそらく、ネットも同じで、最初はダメでも定期的に連絡することで、いつかビジネスにつながるということだと思いました。

これだけではなく、いろいろ得るものがありました。いまは絶版だけど、再版してもよいなあと思いました。

ソースコードと一次情報

8月 5th, 2014 | Posted by admin in テクノロジー | プログラミングを考える | 長橋のつぶやき - (ソースコードと一次情報 はコメントを受け付けていません)

このところサーバ・アプリ設定なんかをちょこちょこやる機会があり、いろいろと発見がありました。

かつては、エンジニアとして、実際のプログラミングとかインフラ構築なんかをやった経験はあるけど、最近は、プランニングなどの経営管理が中心なので、基本、素人レベルです。

で、素人なりに試行錯誤をすると、それなりに発見もある。

その昔、一晩かけてプログラムのソースをコンパイルし、コンパイルが通らなかったら、ソースを修正して、バイナリにして、プログラムを動かしたことがよくあった、よくあった、というより、それが普通だった。

最近になって、パッケージで楽にいけるかと思ったら、意外とてこずるケースが多い。ライブラリのバージョンが古いので、インストールしなおし、パスが通っていない、などなど。さすがにCPUが速くなったので、一晩かけてコンパイルするということはなくなったけど、やはり、同じことの繰り返し。

それで思うのは、ソースにあたること。ウェブでインストール方法とか書籍とかあって、”この通りにすればインストールできます”的なものはたくさんある。これはこれで、すごく有用で、助かるのだけど、この通りやればよいという話でもない。やっぱり、掲載当時は新しいものでもバージョンが上がって古くなったり、あるいは、機種の互換性があわなかったりなど。だから、上手くいかないときはマニュアルに頼るのではなくて、実際のソースコードを見て、どこがまずいのかを調べて、切り分けること、これが結構大事だと思う。

で、このソースにあたるということ、たぶん、エンジニアだけに求められるものではないと思う。

たとえば、アナリスト・コンサル・ジャーナリストといった第3者があるトピックに対して取り扱う場合、”ソースにあたる”1次情報と、マニュアル的な2次情報がある。後者でいえば、”新聞がこう言っていたから、この会社はダメだ”みたいな。たくさんの2次情報をパズルのように組み合わせて、一つの絵にすることは、価値はあるとは思うけど、やはり、価値という点では”1次情報”にはかなわない。

やっぱり、1次情報は、まさにソースにあたることと同じで、ソースをみることで、本当に何が起きているかを理解できるのだと思う。

1次情報が2次情報よりも大事だ、これは当たり前なんだけど、ソースを見ることから、1次情報の重要性を認識したのでした。

21世紀を拓く5つの新しいデザインキャリア

7月 27th, 2014 | Posted by admin in イノベーション | 経営 | 長橋のつぶやき - (21世紀を拓く5つの新しいデザインキャリア はコメントを受け付けていません)

Screenshot of www.linkedin.com

デザイン思考として有名なIDEOのCEO Tim BrownがLinkedIn上で、”5 New Design Careers for the 21st Century”(21世紀を拓く5つの新しいデザインキャリア)として、新しいデザインキャリアを提示していて、気付きがあったので、シェアします。

https://www.linkedin.com/today/post/article/20140722130342-10842349-5-new-design-careers-for-the-21st-century?published=t

まず、前提として、”デザイン”あるいは”デザイナー”は、いわゆる、ファッションデザイナー、工業デザイナーのように、モノのデザインをする人ではなくて、様々なアプローチで課題を解決する、もしくは、何か新しいものをつくるチームのこと。あくまでも、自分のイメージだけど、デザイン、開発、テストなど決まった仕事だけをこなすのではなく、あるときはデザイン、あるときは、開発、テストなど、バックグラウンドが異なりながら比較的小さなチームでマルチファンクションに仕事をこなす、いわゆる、アジャイル的な組織で仕事をすることがデザイン思考的な組織に近いと理解しています。(観察をすることがデザイン思考みたいな話もあるけど、観察は結局手段であって、目的は、様々なバックグラウンドを持つ人間が自由な発想でモノを作る、仕組みを作ることだと思っています)。

で、彼が挙げているのは次の5つ。

1.The Designer Coder – プロトタイムのためのコードを書くデザイナー

プロトタイプは、デザインのなかでも重要なパート。そして、最近のアプリの場合は、コードを書くことがデザインになりつつある。
したがって、コードをかけるデザイナーは、ジョブマーケットで高い価値を生み出す。

2.The Design Entrepreneur – デザイン起業家 

企業家(アントレプレナー)とデザインを融合させることが増えている。とくに、UberやAirbnbは、デザインをアピールポイントとして成功している会社が増えている。新しいプロダクトをデザインできる力があるのであれば、デザイン企業家として挑戦するには今が絶好のチャンス。

3.The Hybrid Design Researcher – ハイブリッドデザインリサーチャー 

いままで、デザインのリサーチャーは、人類学、民俗学、心理学のバックグランドが多かった。この手のリサーチはたくさんの分類をすることで、隠れたニーズを発見することであり、最近ではこうした手法とリアルタイムのデータとを組み合わせたハイブリッドな手法でユーザの行動を把握することが増えている。ユーザ、グループがある技術にハマることを把握することは、イノベーションの大事な一部であり、こうしたハイブリッドデザインリサーチャーの出番となる。

4.The Business Designer – ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、プロダクトからイノベーションを見出すのではなく、ビジネスの仕組み、ビジネスモデル、チャネル戦略、サプライチェーンなどからイノベーションを見出す役割。たとえば、Googleの検索技術は、ユーザにとってイノベーションであるものの、会社に富をもたらしたのは、その技術を広告に当てはめる仕組みを作ったこと。

5.Social Innovator – ソーシャルイノベーター

 貧困、きれいな水へのアクセス、環境汚染など、世界中で社会問題が発生している。こうした課題に対して、これまではアカデミックを含む小さな団体がその問題を解決しようと取り組んできた。そのなかで、最近ではビル・メリディア財団、ロックフェラー財団、ヒューレット財団といったデザイン思考を重視した財団がでてきたこと。そして、D-Rev, Design that Matters,IDEOといったデザイン思考で課題解決する団体を増えてきており、社会問題を解決するソーシャルイノベーターの素地が出来上がりつつある。

どちらかといえば、自分はビジネスデザイナーに近いなあと。あと、思ったのは、世の中の価値がシフトしていること。下の恐竜本でも書かせていただきましたが、ITの場合、最近ではクラウドとかフレームワークとかを使えば、結構簡単にアプリ、サービスができてしまう。だからこそ、重要なのは、さくっとプロトタイプを作って世に出すこと(上記のデザインキャリアでいえば、1.のデザインコーダー、2.デザイン企業家あたり)。

あるいは、世の中で起きているいろいろなことを分類・整理して付加価値をつける(3.ハイブリッドデザイナー、4.ビジネスデザイナーあたり)、もしくは、社会課題を解決すること(5.ソーシャルイノベーター)が重要になってきているんだと思う。

 

Jリーグの経営学:「Jリーグ再建計画」を読む

7月 19th, 2014 | Posted by admin in Jリーグの経営学 | 経営 | 長橋のつぶやき - (Jリーグの経営学:「Jリーグ再建計画」を読む はコメントを受け付けていません)

Jリーグの経営学

このブログでは、「Jリーグの経営学」というカテゴリで、経営の視点からJリーグの抱える問題、その取り組みについて、不定期に取り上げています。

過去のエントリは、Jリーグの経営学 2015年からのJリーグはどうなる?横浜マリノスにみるJリーグの経営学あたりです。そうした問題意識のなかで、「Jリーグ再建計画」を読みました。Jリーグの現状、これからの取り組み、についてきちんと触れており、良い本だと思います。

Jリーグを取り巻く環境

やはり、誰もが共通認識として挙げるのは、現状のJリーグを取り巻く環境は厳しいこと。

Jリーグの収入構造は、1.Jリーグ事務局と2.各J1クラブに分けることができる。Jリーグ事務局での売上は、放映権料と協賛金である。Jリーグ事務局の全収入約120億円のうち、100億円近くをこの2つが占める構造だ。(p14)

という収益構造のなかで、1994年のJリーグバブルでは66回(全264試合)をピークとして現在は7回(全306試合)、しかも、民放はなく、NHKだけ。J1,J2全試合をカバーしているスカパー!のJリーグビジネスも赤字といわれており、放映権料は現在の50億円を維持することすら危ぶまれている状況。

協賛金についても同様で、博報堂が企業向けに広告枠を販売するものの、広告枠が完売することなく、毎年12枠のうち、4~5枠売れ残るという。もちろん、それは、博報堂の持ち出しになると指摘する(p19)。

いってみれば、現状のJリーグは、1.有力選手はヨーロッパにいってしまいJリーグを観なくなった → 2.人々のJリーグへの興味が薄れてきているので、広告主はあえてJリーグに協賛金を払わない、テレビ局もJリーグを放送しても視聴率が取れるとは限らない → 3.Jリーグ事務局、クラブの収益が減少する、というネガティブスパイラルに陥っている。

自分が知っている会社でも、こういうネガティブスパイラルに陥ると結構厳しい。そして、何もしないと、どんどんネガティブスパイラルが加速し、会社であれば事業清算、倒産、売却なんてことがよくある。

Jリーグの次の一手

では、どうやってこのネガティブスパイラルから脱するか?

企業にとって、キャッシュ(お金)がないと生きていけないように、Jリーグも同様。そして、現状のリーグ方式(1リーグ制)のまま行けば、2014年からJリーグ本体に最大13億円の減収予測となるという。そこで、導入したのが、ポストシーズン制の導入。

ポストシーズン制は、簡単にいえば、1年を2シーズンに分けて、それぞれのチャンピオンがポストシーズンに優勝争いをする制度、詳細はこちら

2015年、この制度の導入で10億円程度の増収を確保できるという。

このポストシーズン制でJリーグが復活できるか、といえば、結局のところ、試合数を増やして、増収を作っているので、本質的な解決策ではないと思う。むしろ、願い目で見て、どうJリーグを活性化する戦略をつくるか?

その一つが、やはり、アジア戦略。

たとえば、イギリスのプレミアリーグの場合、イギリス国内での放送権契約は2013-2014シーズンで30億1800万ポンド(1200億円)、国外では別の契約となるも、その全体の6割を占めるのはアジアからの売上。他の欧州リーグとの契約を加えると、アジアがヨーロッパサッカーに支払う放映権料は総額で600億円といわれる。(p86) プレミアリーグもアジアマネーを狙っていて、マレーシアやタイのゴールデンタイムに合わせてプレミアリーグのキックオフをしていると。

香川のように日本からプレミアリーグにいくと、プレミアリーグを観る日本人が増えるように、アジアからJリーグに選手を誘致すればその国でJリーグを観る人が増える。ただし、難しいのは、サッカーはチームプレーなので、ビジネスだけで考えてアジア選手を獲得しても、起用するかどうかは監督次第。無理にアジア選手を獲得しても、”ビジネス先行”になってしまう可能性も否定できないと(p96)

Jリーグ時代の運営もさることながら、今後厳しさを増すのはクラブライセンス制度。クラブライセンス制度については、こちらの通り。

で、どうするか?

自分も結構いろいろな会社の経営に携わったけど、結論から言うと、Jリーグ全体あるいは各クラブ、をきちんと利益がだせる成長路線に持って行くのはかなり難易度が高いと思う。たとえば、企業の場合は、売上が落ちる局面では、固定費(売上とは関係なく発生するコスト、オフィス、人件費、減価償却費など)を削減するのがセオリーだけど、Jリーグの場合、選手の報酬を大幅カットすると、チームとして成り立たないと思う。

となると、やっぱり、ファンを一人でも多く増やさないといけない。それはアジアもそうだし、日本も同様。ネットビジネスでいうところのユーザを増やすことと同じだと思う。そして、ネットビジネスにおいて、ユーザを増やす方法は、親、家族、親せきなど身近なところから使ってもらって、それを友達、友達の友達、友達の友達の友達と、そのサークルを増やすこと。Jリーグもやっぱりこうやってファンを徐々に増やすしかないのかもしれない。

今から20年ほど前のJリーグ開幕当時、自分は静岡市の中学に通っていて、いたるところに地元チーム清水エスパルスの匂いがした。GKの子供がとなりの小学校にひっこしてきたり、キャプテンが蕎麦屋で蕎麦をすすっていたり。今でいう、”誰でも会えるサッカー選手”といったところか。

いまは苦しいかもしれないけど、Jリーグの次の飛躍にむけてこれからも応援していこうと思いました。