ダイヤモンド社小島様より献本いただきました。ありがとうございました。
結論から言うと、この本はGoogleの人間(エリック・シュミット&ジャレット・コーエン)によって書かれているものの、
Googleがこれからどうなるかということは書かれていない、むしろ、Googleがこれから立ち向かわなければならない問題を記述していると言える。
自分がはじめてネットを使うようになったのが1996年、それから比べるとネットは誰もが便利に使われるようになった。
そして、こうしたネットを使うようになり便利になる一方で新しく考えなければいけない問題も増えてきている。
今後、起きる問題について論じているのが、本書であり、自分なりにまとめると、「国家と個人のアイデンティティ」の問題に帰着すると思う。
Googleの成功は言うまでもなく検索ビジネス。2000年初め、ごちゃごちゃだったウェブの世界をページランク(引用されているページから順に検索結果を表示)という革新的な検索技術で、一気にネットの主役となり、その後もAndroidの成功、さらには、Google Glass、自動運転自動車など、その勢いはとどまるところを知らない。
その源流となるGoogleのビジネスモデルは、ウェブを通じてできるだけたくさんの情報を取得すること、いわば、ウェブ民主主義的なものがベースにあると思う。
とはいうものの、ネットが良くも悪くも世の中に影響を及ぼすとき、それを規制しようとする動きも当然でてくる。それが国家による抑制。
たとえば、筆者は、オンラインアイデンティティとして、次の動きがでてくると指摘する。
政府にとっては、追跡不能で正体不明の匿名の市民、いわば、「隠れ人」をオンラインで大勢野放しにしておくのは、リスクが高すぎると考えても不思議ではない。そこで、仮想世界に影響力を及ぼすために、各市民をオンラインアカウントと紐づけして、国家レベルでの認証を義務つける、といった措置をとるだろう。(p48)
結局のところ、国境を越えて誰もが自由に情報を発信することができるネットが国家によるネットが生まれると。具体的には、こう指摘する。
「政府がフィルタリングなどによってインターネットを規制すれば、グローバルであるべきインターネットが「国ごとのネットワークの寄せ集め」とかす、という懸念が生じる。そうなれば、やがてワールドワイド(世界規模の)ウェブは砕け散り、「ロシアのインターネット」や「アメリカのインターネット」などが乱立するようになるだろう。(p129)
やはり、ネットを通じてサイバーテロ、それは、単にネットだけの攻撃ではなくて、無人飛行などのデジタル操縦も脅威となり、そうした脅威に対応するために、何かしらのフィルタリング、規制が必要にならざるをえないと。
もちろん、これはネット全体のなかのほんの一部に過ぎなく、これがすべてではない。ただし、こうした事態が加速すると、ネットのオープン性はどんどん低下せざるをえない。本書はこうしたネット規制社会への警鐘と自分は理解しました。そして、最後はこう指摘する。
出会いと好機が重なるところには、無限の可能性がある。世界中の人たちの生活の質を高めるには、コネクティビティを通じて出会いを広げ、テクノロジーを通じて機会を生み出していくのが一番である。
やっぱり、ネットはコネクティビティを通じて、出会いを広げ、さまざまな機会を生み出す。これを追求すべきとなんだと思う。