「半導体戦争」にみる繰り返される歴史

5月 28th, 2023 | Posted by admin in 長橋のつぶやき

最近読んだ「半導体戦争」は、思うところがありました、一言でいえば、歴史は繰り返えされる、でしょうか。この本は、1950年代、真空管から半導体が生まれたところからスタートして、現代の中国による半導体製造、世界の半導体が台湾のTSMCに一極集中する現代まで、半導体全史といったところでしょうか。

アメリカで誕生した半導体は当初軍事目的でしたが、早くから「産業界の石油」としての重要性が認知されるようになりました、そして、半導体の用途も軍事用から民生用に拡大します。拡大するなかで、製造コストが下げるために当初は香港、台湾、シンガポールといったアジアに製造を委託します。それが現在の半導体=安全保障につながる話と理解しました。

 で、アメリカにとって、転機は1980年代、まだ、マイクロソフトのWindows95が発売される前で、日本の日立、富士通、NECといったメーカーが半導体を製造のみならず、キャノン・ニコンといった企業も回路をシリコンウェーハに焼き付ける露光装置を開発・販売。あまりにも日本企業の強さにインテルも祖業であったDRAMの製造をギブアップします。この背景の一つが、日米金利差で、80年代当時の米国の金利は最大で21.5%、一方、日本は6-7%で、さらには財閥系銀行から低金利で融資、日進月歩で進化している半導体製造には、自己資金では到底賄えない膨大なおカネがかかるため、調達コストが明暗の差を分けたと指摘します。

 その後、日本もバブルが崩壊し、さらには、インテルはDRAMからは撤退したものの、マイクロプロセッサ(CPU)でWindowsとタイアップして、Wintel時代を築き、インテルは完全復活、さらには、韓国政府が支援するサムソン、台湾が支援するTSMCの台頭で日本は半導体立国の座を失ってしまったことは記憶に新しいのではないでしょうか。

 歴史は繰り返される ― Wintelで圧倒的なシェアを誇ったインテルも、モバイルについては、省電力設計のARM、そして、微細化の最先端をゆくTSMCに追い越され、データセンターもGPUを設計するエヌヴィディアに追い越され、80年代の日本企業に追い詰められた状況に近いのかもしれません。

 もう一つ、歴史は繰り返されるという点でポジティブな点があるとしたら、日本かもしれないですね。80年代の財閥系銀行にかわり、最近では、日本政府が、半導体の投資に本腰を入れ始めました。アジア諸国に追随する二番煎じではあるかもしれないですが、半導体製造装置など日本がシェアを持っている分野もあるので、自動車が内燃機関からEV化して業界が縮小しても、政府の後押しで今後は半導体が日本の基幹産業になるかもしれないですね。

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