今日の日経新聞の沢木耕太郎のエッセイ「ただそれだけで」、いろいろ思うところがありました。自分は沢木耕太郎のファンで、最近は少なくなりましたが、新刊が出れば真っ先に読みます。彼は1947年生まれ、もう75歳なんですね。。
入口は、やはり、「深夜特急」です、会社をやめて、突然旅にでることを思い立った26歳の彼が、香港からロンドンまでバスを乗り継いで旅をする、言わずと知れたバックパッカーのバイブルですね。さらには、アマゾンで文明と接触したことのないイゾラドを追ったドキュメント「イルカと墜落」、登山家山野井泰史がヒマラヤの難峰ギャチュンカンの登攀記「凍」もいいですね。
さて、このエッセイ、彼が東北地方を訪問して、近くにいい居酒屋ないか?と黒服に尋ねたところ、地元じゃないとわからなさそうな店を教えてもらい、その居酒屋で至福の時を過ごしたものの、マスターから最近では食べログを見て、訪問する客が多いことを知り、それは「もったいない」だろうと。
自分はどちらかと言えば、この食べログ派で、知らない街で、何か食べるとなるとたいてい食べログをチェックして、レーティングが高い店を訪問してます。ただ、これはまさに彼の指摘の通りで、知らない街で、食べログに頼らず、いろいろと試行錯誤を重ねながら、たまたま見つけた店と食べログで見つけた店との間では、やはり、違いがありますよね。
で、「深夜特急」でも、彼はバンコクからインドを端から端まで見たいと、カルカッタ(いまではコルカタですね)まで飛行機で飛びます。そして、カルカッタの空港で偶然東北大学の学生と出会い、インスピレーションのまま、一緒にホテルにいったら、それは素晴らしいところだったと。「深夜特急」は、こうしたググる以前の偶然の邂逅のエピソードの塊でもあり、それが面白いんですね。
さて、このエッセイ、沢木耕太郎の「深夜特急」から変わらず連綿と受け継ぐ旅のココロを見た気がしました。旅というのは、ググって、その場所を見るのではなく、知らない場所で試行錯誤しながら偶然の邂逅を楽しむことに魅力がありそうです。
APUの出口さんは、「メシ、風呂、寝る」から「人、本、旅」に変えるべしと諭します。本当にこれはその通りで、バックグラウンドの違う人と会う、いろいろな本を読む、そして、「ググらない旅」で試行錯誤して、偶然の邂逅を楽しんで、視野を広げる。まだまだ、コロナも収束はしていませんが、国内、そして、海外もだいぶ近くなりそうですよね、今年は「ググらない旅」を楽しんでみようと思いました。