今年の9月に「図解入門 よくわかる 最新 量子コンピュータの基本と仕組み」という書籍を上梓のこともあり、量子コンピュータの進歩に興味を持っています。
現在のコンピュータ(古典コンピュータ)は70年前は真空管をつかって計算していましたが、トランジスタ(半導体)によって飛躍的に発展しました。量子コンピュータもいまは超伝導方式などがありますがノイズが高い状態でいわば真空管で計算している状態です、どれくらい先かはわかりませんが、量子コンピュータの「トランジスタ」の登場によって、飛躍的に進化すると思っています。
そうしたなかで、オランダのUTデルフトの量子コンピュータ研究チームQuTechが量子ネットワークについて興味深い指摘をしています。日本語では@ITが書いてますちなみに、10年近く前ケンブリッジでポスドクしていた際、UTデルフトと交流があって、一度、この大学に訪問しました。デルフトは本当に大学の街という感じで、いい街でした。
量子ネットワークは、量子現象を利用したコミュニケーションです。で、量子現象は、ザックリ言えば、計算につかう量子ビットの位置が確率的にしか決まらないことで、この現象を利用して、鍵(量子鍵)を配布すれば、再現性がないのでセキュアな通信を実現できるというコンセプトです。コンセプト自体は、40年以上前から提唱されていましたが、実現のハードルが高い技術でもあります。
で、この量子ネットワーク、書籍にも書いていますが、国によって温度差があります。たとえば、中国では量子ネットワークをインターネットにつぐ次のインフラとして北京から上海への光ファイバーを敷設した量子ネットワーク、さらには衛星通信(衛星、宇宙の場合は、地上にくらべてノイズが少ないので、量子ネットワークの実現のハードルが低いのもあります)まで展開しています。一方で、グーグルは、量子ネットワーク、暗号はニーズがないということで、どちらかといえば、クラウドと量子コンピュータの融合を実現しようとしています。
もどって、UTデルフトの量子ネットワークのロードマップですが、得てすれば何でもできると思われがちな量子コンピュータ・ネットワークをステップをおってデプロイしようという点はすばらしいアプローチだと思います。とくに、量子ネットワークの最大の特徴であるエンタングルメント(もつれあい)、複数の量子ビットが場所を隔てても同じ状態をキープできる、について、現状の技術では限度があるので、ロードマップとして定義するのは現実的なアプローチかと。
今後、量子コンピュータはまだまだ動きがあると思いますので、ウオッチしていきたいと思います。来年の1月にセミナーもやります。