村上春樹と海外ビジネス

10月 6th, 2016 | Posted by admin in 長橋のつぶやき

 やれやれ、というかんじで、この時期になるといつも村上春樹のノーベル文学賞が話題になります。で、なぜ、彼がいつも候補になるのか、ハルキストの一人として以前から不思議に思っていました。
 
 その不思議が比較的解消されたのが、去年、彼が出版した自叙伝的エッセイ「職業としての小説家」。そのなかの、「第11回 海外に出て行く。新しいフロンティア」を読んでなるほどと思いました。

 「アメリカで作家として成功しようと思ったら、アメリカのエージェントと契約し、アメリカの大手出版社から本をださないことには、まずむずかしいよ」(p273)とアメリカ人に忠告され、彼は忠実に守って、アメリカの文芸界の超トップクラスのエージェントと契約したと。

 そして、日本人の作家ではなく、アメリカ人と同じ土俵に立ってやっていこうと、自分で翻訳者を見つけて個人的に翻訳してもらい、その翻訳を自分でチェックし、その英訳された原稿をエージェントに持ち込み出版社に売ってもらうという努力を続け、アメリカ人と同じスタンスで扱ってもらうようにしたと。

 そうしてアメリカのマーケットを開拓したことが、ヨーロッパ、ロシア、東欧、今では世界50カ国で読まれるようになったと。まあ、アメリカマーケットの開拓とノーベル賞候補は直接因果関係はないものの、アメリカの土俵というフロンティアを開拓した彼にやはり敬意を表したいと思う。

 これはわりとビジネスでも似たような話で、一般的には国内なんだろうけど、たまに、最初から海外を見てビジネスを展開するスケールの大きい人がいる。たとえば、50年以上前、誰もアメリカに日本製品が通じると思わないなかで、アメリカに移住したソニーの盛田昭夫氏は最たる例だと思う。そして、そのリスクをとったからこそ、大きなリターンを得られるのではないかと。

 というわけで、今年のノーベル文学賞、日本人として新しいフロンティアを切り開いた彼に期待です。
 

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