「GE帝国盛衰史 「最強企業」だった組織はどこで間違えたか」を読みました。タイトル通り、GEの本で、巨大企業の内情をかなり細部にわたって描いている力作です。そして、これはGEに限らず、企業はどこで間違えるか?について大いに示唆を与えてくれると思いました。
まず、この本を読むまでは、自分のなかでのGEの印象は、やはり、「最強企業」です、あらゆる分野に展開し、経営陣を育成するためにクロトンビルと呼ばれる企業研修所で徹底的に鍛えて、そして、トップのCEOは、何年にもかけて選考する、そうした会社が間違えることはしないだろうと。
では、なぜ、この「最強企業」が間違えたのか?自分なりに解釈すると、まず、CEOの交代で、2001年、カリスマCEOであったジャック・ウェルチからジェフ・イメルトに交代。イメルトがCEOとして適任ではなかったというよりも、GEのCEOは伝統的に取締役会議長も兼任していて、CEOが絶対的な権力を持っていて、反対意見を許さない社風(p334)があったと。実際に、イメルトは、部下からの悪いニュースを聞くのを好まず、自分自身ならびに部下がたてた数値目標も達成できることを当然としたようです。
もう一つは、コングロマリット、GEの事業は航空エンジン、ガスタービン、ヘルスケア、金融など多岐にわたります。そして、多岐にわたると、その事業で何が起きているのかわかりづらいです。実際、イメルトもCEOに就任した当時、GEキャピタルなどの事業構造がわからなかったそうです。で、わかりづらいならまだしも、各部門では高い利益目標を達成するために、経費の付け替え、他部門への移管などの利益の水増しが「経営のマジック」として認識されていたと。これは東芝と同じケースかもしれないですね。
やはり、コングロマリットで他部門が何をやっているかわからない、かつ、上からの業績のプレッシャーがきついので、自部門で利益を出すために水増しをする。とくに、GEの場合、株価・配当の維持は至上命題であり、現場では良かれと思ったことが、結果的には間違った選択になったのかもしれないです。取締役会の機能不全、コングロマリット、いずれも共通するのは反対意見を許さない社風ではないでしょうか、間違った方向に進んでいても、それを反対、止める動きがやはり必要ですよね。
実際のところ、GEは倒産したわけではなく、いまでも上場をしていますが、かつての勢いはありません。とはいえ、どんな優位なポジションにあっても、どんな規模が大きくても、企業が崩壊するのはあっという間の気がします。だからこそ、間違えないように、反対意見を受け入れる、これも大事と思いました。