池井戸潤「陸王」を読みました、588ページもあるけど、テンポの良さとわかりやすいストーリーであっという間です。いつもながらの展開ではあるけど、やっぱり、うまいなぁ、と思います。
彼がこの本、あるいは、半沢直樹でもそうだろうけど、一貫して描きたかったこと、それは”バンカーの矜持”なんだと思う。この物語は、百年続いた足袋作りメーカーこはぜ屋が、既存の足袋市場が縮小する中で新規事業として、会社の社運をかけて新規事業であるランニングシューズに挑む。でも、足袋メーカーという”点”とランニングシューズという”点”、この点と点を結ぶのは、銀行員である坂本であり、彼の存在なくしては、この物語は存在しない。
”銀行員(バンカー)”というと堅苦しいイメージがあるかもしれない。でも、堅苦しいだけではなくて、融資先が成長するために必要な手立てを惜しみなく提供して、点と点を結ぶ、それがバンカーの矜持、と言えるかもしれない。そんな企業の成長を資するバンカーがもっと出てほしい、こんな思いがあるのかなあと。
そして、もう一つ読んでいて小気味がよいのが、主人公であるこはぜ屋社長の宮沢、冴えない中年だけど、人一倍アツい、映像化したら小日向文世かなあ。それはともかく、重要なのは、リーダーシップなんだと思う。自分も経験あるけど、新規事業はシンドイ。製品もなければ、販路もなければ、売れる保証もない。最初にあるものは、リーダーの想い・情熱だけ。でも、その想い・情熱、すなわちリーダーシップで、周りを巻き込み、新しい仲間を増やし、大きなうねりを作って、途方もない大きな目標を達成する。
自分が私淑するベンチャーキャピタリストはいつもこういいます。「ビジネスで重要なのは仲間を作ること。自分で全部やらないで仲間を作ることでビジネス大きくできる」、陸王はこのよいサンプルと思いました。ま、ここまで成功するケースはなかなかないと思うけど、元気になれる本でした。