ネットビジネスと論語の「近き者説び、遠き者来る」

3月 23rd, 2014 | Posted by admin in イノベーション | 経営 | 長橋のつぶやき - (ネットビジネスと論語の「近き者説び、遠き者来る」 はコメントを受け付けていません)

温故知新とはいったもので、論語を読むといつも新しい発見があります。

今回の発見は、子路第十三にあるこの一節

葉公政を問ふ。子曰く「近き者説(よろこ)び、遠きもの来る。」

葉公が政治について孔子に質問した。孔子は言う「政治を行うには民心を得ることを貴びます。ゆえに近くにいる民は己の恩沢をこうむって悦び、遠方の民は己の封を聞いて来たり附くようにすべきであります」

「論語新釈」(宇野哲人、講談社学術文庫p389)

そう、ある政治家がすばらしい政治をしていれば、そこに住んでいる人々は喜ぶ。そして、それを遠方の人が聞きつけ、そこによって来る。

これは当たり前といえば当たり前なんだけど、すごく含みがある。やっぱり、遠方の人間を直接呼ぶことはできない、まずは、近い人々を呼ぶと。

そして、ネットビジネスでも同じことが言えると思う。

最近、よく相談を受けるのは、どうやってユーザを増やすか。とくにスマホのアプリの場合、誰でもアプリをつくることができるので、企業だろうが個人だろうが同じ土俵で相撲を取らざるをなくて、結局、がんばってつくったアプリが埋もれてしまうケースが多い。

で、どうやって埋もれないようにするか?

やっぱり、「近き者説び、遠きもの来る。」しかないと思う。簡単にいえば、自分の知り合い、企業であれば取引先、など、ほんとに顔の見える近い人を呼び込み、近い人が”このアプリはいけてる”と思ってもらって、はじめて、遠方の人が聞きつけ、そのアプリをダウンロードする。だから、どんなすごいアプリでも、リリースすればすぐに遠方の人がやってくることはほとんどないと思う。

論語のこの説は政治の話だけど、その言わんとするところは政治、ビジネス、ひいては、ネットビジネスとも同じであり、まずは、自分の知っている人を口説く、それがなくては、遠方への拡散はありえない。まさに、論語を読み返して、温故知新の思いです。

失敗を認める文化

3月 20th, 2014 | Posted by admin in 経営 | 長橋のつぶやき - (失敗を認める文化 はコメントを受け付けていません)

先週、ある方との会話で、なるほど、と思ったこと。

彼はこう指摘する。「ビックデータは、100%完璧な答えを出すものではない、むしろ、70%くらいの確率で未来を教えてくれる」

これは当たり前といえば当たり前だけど、こういう視点もありだなあと思いました。

やっぱり、日本のシステムとくに情報システムの場合”100%”を要求される。

もちろん、銀行の勘定システムの場合、1万円引き落とすつもりだったのに、1000円しかでなかったというミスがあってはいけない。

でも、その100%にこだわることによるデメリットもある。

それは、それはミスを許さないカルチャーになってしまい、冒険をしようという気概がなくなってしまうことだと思う。

たとえば、日本の大企業には、情報システム部があり、情報システム部の仕事は、”安定的”にシステムを運用すること、冒険はできない。

そして、安定的な運用にこだわるあまり、新しいものを取り入れなくなり、しまいには競争力が落ちる可能性はゼロではない。

で、どうするか?

”冒険”は必要。そして、一番重要だと自分が思っているのは、”冒険の失敗を認めるカルチャー”だと思う。もちろん、失敗はよくないし、失敗はゼロが望ましい。でも、どんなに努力しても失敗することはある。でも、その失敗が次の成功につながるのであれば、悪い話ではない。だから、冒険の失敗を認めるカルチャーは大事だと思う。

で、難しいのが、失敗の”度合い”。かつて、旧日本陸軍がビルマ英軍攻略で立案したインパール作戦では、山岳地域の補給路確保の難しさから、立案者の牟田口中将を除いて誰もが”失敗”すると感じていた。でも、彼の上司である川辺中将が”彼ががんばって立案しているから、認めてあげよう”という温情で作戦は決行され、多大な犠牲を強いられた。すなわち、失敗を認めることは重要、でも、致命的な失敗を認めたら会社はつぶれてしまうこともある。

結局のところ、バランス感覚なんだと思う。リーダーたるマネジメントが次につながる失敗であれば認め、会社を揺るがすような失敗であれば、断固として拒否する、難しいけど、こうしたことが大事なんだと、ビックデータの話から思いました。

キューピーにみる良い会社の条件

3月 19th, 2014 | Posted by admin in 経営 | 長橋のつぶやき - (キューピーにみる良い会社の条件 はコメントを受け付けていません)

週末にテレビ番組カンブリア宮殿のキューピー特集を見ました。

キューピーは、マヨネーズのイメージが強いけど、マヨネーズの売上は全体の10%くらいでそれほど高くない。むしろ、卵製品、サラダ、物流といったマヨネーズ以外が売上をけん引している。

でも、キューピーのビジネスはマヨネーズであり、マヨネーズを研究した結果、卵の派生製品に行きつき、おいしくマヨネーズを食べてもらうためにサラダ(生鮮野菜)を提供し、そして、マヨネーズを新鮮に運ぶために流通ビジネスを始めた。すなわち、多角化しているようだけど、実はルーツは同じと。

それでシンクロしたのが、最近読んだ稲森さんの新著「稲盛和夫の経営問答 従業員をやる気にさせる7つのカギ」で、彼はこう指摘する「すなわち、新規事業を立ち上げる場合は、自分の得意技を使って展開することが重要です。決して「飛び石」を打ってはなりません」(p101)。

このキューピーの例は、まさに、得意技を使って展開することそのものだと。自分の知っている会社でも、新規事業をやろうとして、「飛び石」を打った結果、うまくいかなったケースは結構ある。「飛び石」を打たず、自分の得意技を使う、当たり前といえば当たり前なんだけど、これは意外難しい。でも、ブレずに得意技にこだわる会社がやはりよい会社なんだろうなあと思いました。

世界ハイテク企業ウォッチ:なぜツイッターが“オワコン”扱いされているのか

3月 7th, 2014 | Posted by admin in イノベーション | お知らせ | テクノロジー | 長橋のつぶやき - (世界ハイテク企業ウォッチ:なぜツイッターが“オワコン”扱いされているのか はコメントを受け付けていません)

四半期に一度書かせていただいているコラム 世界ハイテク企業ウォッチ がアップされました。

今回は、Twitterのビジネスモデルを取り上げさせていただきました。

世界ハイテク企業ウォッチ:なぜツイッターが“オワコン”扱いされているのか

Yahoo!ニュース BUSINESS 世界ハイテク企業ウォッチ:なぜツイッターが“オワコン”扱いされているのか

CarPlayにみるアップルの”ブレ”と”変化”

3月 4th, 2014 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー | 長橋のつぶやき - (CarPlayにみるアップルの”ブレ”と”変化” はコメントを受け付けていません)

アップルが、iPhoneを車と連携させる新しいサービス CarPlay を発表、で思ったこと。

最近、とみに思うのは、ブレることと、変化すること。

”ブレ”と”変化”は同じようで結構違う、と思う。

共通しているのは、ある状態(たとえばA)から別の状態(B)に遷移すること。

たとえば、ケータイでいえば、10年くらい前は、周りを見渡せば、ほぼ国内製のフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)だった。

で、10年たった2014年、フィーチャーフォンはゼロではないけど、圧倒的にスマホの数が多い。

10年前、フィーチャーフォン向けにサービスを提供している会社にとっては、10あった全体のパイが1になるわけであって、確実に売り上げは減ってしまう、だから、”変化”しないといけない。進化論的に言えば、”もっとも変化に対応できる生物が生き残る”ともいえるかもしれない。

ただ、変わることがすべて良いとは限らない。

たとえば、このCarPlay、いままでアップル、あるいは、スティーブ・ジョブズは、”ユーザ体験を自分でコントロールする”という理念のもと、できるだけパートナーを排して、自社でハード、ソフト、サービスを提供してきた。何度もiPhone互換機、Macが動くWindows PCが取りざたされつつも、頑なに拒んだのは、こうした”すべてのユーザ体験を受け持つ”というアップルの矜持があったのだと思う。

アップルに関しては、イノベーションのジレンマ抱えるアップル、突破口に待ち受ける日本企業のさらなる苦難にも書きましたので、あわせてご参照ください。

そして、今回のCar Play、もちろん、iPhoneを接続することが前提であり、WindowsでiTunesを利用できることに近いのかもしれないけど、若干の危うさも感じる。やはり、アップルにとってユーザ体験は自社でコントロールする話であるものの、自動車の場合、”車”がユーザ体験の多くを占めるのではないかと。すくなくても、スティーブ・ジョブズであれば、断固拒否したように思う。そう意味で、このアップルの決断は、同社の理念がブレたのかもしれない。正解はまだわからない。

話はもどって、変化とブレ、結局のところ、その要因は理念なのかもしれない。きちんとした理念があり、その理念に沿って、ビジネスがかわったとしても、それは”変化”、でも、理念とは違う方向に進むこと、これは”ブレ”かもしれない。理念にブレずに進むことは簡単なようで、難しい。だからこそ、ブレない理念が必要と言えるかもしれない、とCarPlayの発表から思いました。