システム開発界隈で話題になっている本、読みました。日経コンは、アナリスト時代にお世話になったり、知り合いの筆者の方がいらしたり、自分にとってやや近い存在かもしれないです。
IT業界のサグラダファミリアと揶揄されたみずほ銀行の次世代勘定システム、35万人月、4000億円半ば、スカイツリー建築費の七本分というとてつもないリソースを投入して、2019年7月にようやく完了しました。たしか、10年くらい前、自分がアナリストのときも、みずほ次世代案件とかあったので長かったなあという気がします。
なぜ19年もかかったのか、自分の理解では、最初の第一勧業銀行、興銀、富士銀の経営統合のときのボタンの掛け違いが大きいと思う。当時の3行のトップはシステムについて「現場で調整してくれ」という話で方向性はありませんでした。で、現場で調整すると「ウチのシステムの方が進んでる」、「いやいや、ウチのシステムの方が業務にあってる」など機能論に終始して、結論がでず、迷走。たらればですが、トップが「これでいく」とトップダウンの方向性があれば違った結末になったと思います。これはみずほだけではなく、いろいろなところにあてはまる教訓だと思います。
で、この本、みずほの次世代システム開発の迷走ぶりを一方的にディスるだけではなくて、次世代システム「MINORI」の概要、API連携、SOAによる疎結合あたりも取り上げていて、良い意味でも悪い意味でもフェアですね。ただ、一つあればよかったと思ったのが、今後の銀行システムがどうあるべきか、骨太の議論があってもよかったなあと。
とくに最近はフィンテック勢の躍進が目覚ましく、銀行しかできないことがだいぶ減ってると思う。たとえば、給与振り込みも今は実現してませんが、そのうち、PayPay口座に入金みたいなこともできるはずだし、たしか、中国はもうできてますよね。海外送金も銀行経由でなくてもだいぶ実現しつつあるし、コストも安いですしね。
「人が育った」というのがこのプロジェクトの成果ということですが、育った人を活かすのが今後の課題・チャンスなんでしょうね、やっぱ、会社が魅力的じゃないとフィンテック勢にうつってしまうし。みずほを含めて銀行がどう新しい勢力と競争・共存するのか、そして、 他山の石以て玉を攻むべし、このみずほの教訓が自分にも大いに学ぶところがありそうです。