ある京都の料亭と忘れられる権利

10月 12th, 2013 | Posted by admin in テクノロジー | 経営 - (ある京都の料亭と忘れられる権利 はコメントを受け付けていません)

先日、東京だけど、京都料理を食べる機会があったので、ふと思い出したこと。

ベースは東京なので、京都にいくことは、それほど多いわけではないけど、京都にいくと必ずと言っていいほど通う店があります。

何がきっかけで、その店を知ったのかは思いだせないけど、京都のただでさえ分かりにくい路地のさらに分かりにくいところにあり、最初の訪問は迷って30分もかかりました。

そんなひっそりした店だけど、味はすばらしい、季節ごとに活かした素材、その素材を活かす出汁、おかみさんのサービス、器、店の雰囲気、何をとっても言うことがなく素晴らしい店です。

で、その店、近年ミシュランに登録されたようで、一見さんが増えているという。店としても、顧客の拡大が見込めるので悪い話ではないと思う。

でも、この間、ひさりぶりに行こうと、食べログを見たら、”店の人が常連さんばかり贔屓している”みたいな書き込みがあって、その心ない書き込みにちょっとがっかりした。

その店は、初めていったときも、どんなときも、店の方が丁寧にお迎えいただき、帰る時も、路地を曲がるところまで、ずっとずっと手を振ってお見送りいただいて、いつも恐縮しているくらい。たしかに、何度も通っている人には積もる話もあるだろうけど、誰にでもきっちりサービスを提供するところです。

そういう意味で、”一見さんお断り”というのは、本当にクオリティの高いサービスを提供するには必要なことかもしれないと思いました。


そして、この話、ネットにも共通するところがあると思う。

現状のネットでは、自分の個人情報がネットに掲載されることがしばしばある。それがうれしいこともあれば、のせてほしくない情報がのせられることもある。とくに、検索大手グーグルの場合、情報削除に関しては保守的で、消してほしいとリクエストを出しても、なかなか消してもらえない。先の京都の料亭の話であれば、ミシュランに載せてほしくなくても、載ってしまう(それはそれで名誉だけど)ケースに似ているかもしれない。

やっぱり、世の中のあらゆる情報を検索できることはいいのだけど、”検索される側”としては提供したくない情報もあるし、”ネットはすべてオープンな世界なので、なんでもシェア”というのはありえない。

で、どうするか?一つは、EUのプライバシー保護議論で出ている”忘れられる権利”が一つのアプローチかもしれない。

忘れられる権利は、”個人データ管理者はデータ元の個人の請求があった場合に当該データの削除が義務づけらる権利”(Wikiより)であり、個人の請求で、その個人のデータを”忘れることができる”権利。

京都の料亭はわからないけど、すくなくとも、ネットで自分の情報が掲載されていて気持ち悪い、というのは、この権利が広まれば、もしかしたら、軽減されるかもしれないです。

MOTとマネジメント

9月 13th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー | 経営 - (MOTとマネジメント はコメントを受け付けていません)

最近思うこと、その昔大学で博士課程の学生をやっていたころ、単位取得のためにMOT(Management Of Technology)の授業をとっていた。

当時は、研究一筋でマネジメントとは全く縁のない世界にいたこともあって、その新鮮さに大いに刺激を受けたものでした。

そして、アナリスト、そして、マネジメントに身を置く立場になってみて、MOTに対して考え方が変わってきたと思う。

というのは、当時は、マネジメントは、”一部の企業のエラい人がやるもの”と思っていたけど、いろいろ経験してみて、マネジメントは、企業のエラい人ではなくて、誰もが毎日何かしらのマネジメントに携わっていること。たとえば、体調管理はマネジメントそのものだ。

という意味では、マネジメントのないテクノロジーはありえないともいえる。では、テクノロジーならではのマネジメントってなんだろう?


ちょっと極端かもしれないけど、”テクノロジーな人がマネジメントを知る”ことだと思う。前述の自分のケースも、証券会社に勤めることがなく、エンジニアのままだったら、相変わらず、マネジメントは、”高嶺の花”だったかもしれない。マネジメントが近くにあること、それを知ることで、さらに、勉強する。そうしたきっかけづくりというのはとても大事。

自分が思うにテクノロジーな人(=理系)はマネジメントが向いていると思う。たとえば、ダイエットというマネジメントであれば、どのようにして体重が減るのかを仮説を立てて、その仮説を日々の食生活・運動で実行しながら、体重を測ることで検証し、また、仮説を検証する。このPDCAサイクルは、いわゆる、理系の実験プロセスそのものだろう。

 世の中にマネジメントがあふれている、でも、それに気が付くのはもっと重要、そんなことを先日思いました。

グルーポンとロケーション・モバイル

6月 30th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー - (グルーポンとロケーション・モバイル はコメントを受け付けていません)

前のエントリーでロケーション・モバイルが広がっていることを紹介したけど、もうひとつ最近思っていること。

それは、最近のグルーポン、英語版のグルーポンのメールを毎日受け取っているけど、たとえば、IT University Online – Online Deal(MSオフィスのトレーニングコース)のように、一回受けたら終わりのモノが多い。

これって、もともとのグルーポンの思想と違ってないか?というのが、最近、思っていること。

自分の理解では、グルーポンのもともとの思想は、”ローカルのプラットフォーム”、近くのレストランのクーポンをグルーポンのサイトで購入し、最初は割安で試せるけど、次からは常連となって、そのレストランの長期の収益に貢献する。グルーポンとしては、グルーポンでクーポンを購入する顧客にとっては、”近くにいい店を発見した、今後、友達を連れていってみよう”と次のきっかけになり、レストランとしても、新規顧客開拓になり、そして、グルーポンとしてもクーポンを購入してもらえるので、全員ハッピーになれる、理想的なビジネスモデルのように見える。そして、この”ロケーション・モバイル”という文脈からは、グルーポンほどふさわしいプラットフォームがないように見える。

でも、実際、グルーポンは、たしかに、地域にあわせたクーポンもあるけど、やはり、”1回きり”が多いようにみえる。

自分の理解では、結局のところ、グルーポンは“安売り”だからだと思う。安売り自体は全然悪くない、むしろ、同じもので値段が安ければ当然安い方を買うべきだと思う。

でも、グルーポンに掲載されているモノは、すべて安いとなると話は別だ。

レストランの場合、最初は安いかもしれないけど、次にいったら同じ値段で提供できるわけではない。安さだけを求めたら、顧客サイドとしても、”高いなあ”と思ってしまう。

そして、レストランとしても、ファミリーレストランのようなチェーン店は別だけど、”ウチは安いから来てほしい”と思うレストランはそれほどないはずだ。そして、安くしようとしたら、規模を拡大して、仕入れコストを安くするみたいな話になるので、結局のところ、ファミリーレストランに収斂すると思う。

そう考えるとグルーポンという仕組み、”安い”を目当てに購入する顧客・運営サイドと、安い以上のモノを求める店舗サイドとの間にギャップがあるように思う。だから、オフィス講座のような”1回きり”もしくは”在庫処分セール”が主流になるんじゃないかと。それはそれで、クーポンサイトの一つの歩む道かもしれない。

広まる”ロケーション・モバイル”

6月 30th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー - (広まる”ロケーション・モバイル” はコメントを受け付けていません)

ビジネス・インサイダーに面白い記事があったので、紹介。

タイトルは、Why Local-Mobile Marketing Is Explodingで、さしずめ、日本語に訳せば、拡大するローカル・モバイルマーケティングといったところだろうか。

ローカル・モバイルとは?

そもそも、ローカル・モバイルとは、”geo-aware” 、あるいは、”geo-fenced”なども称され、要するに、定額パケットスマホが普及すると、位置情報と組み合わせたいろいろなサービスが提供できる。たとえば、Googleでは、スマホで”ピザ屋”と検索すると、自分の居場所から最も近いピザ屋を検索して、表示してくれたりする。言ってみれば、スマホを軸としたネットとリアルの融合といったところだろう。

拡大するローカル・モバイル

日本でも、このローカル・モバイル、だいぶ利用するところが増えてきたけど、USでは、かなり拡大しつつあるという。この記事を要約すると以下、

  • 位置情報は、新しい”Cookie”:モバイルの場合、サードパーティのクッキーが取り扱えない場合が多い。そこで、位置情報を新しいクッキー代わりに利用する。位置情報をグルーピングして、効果的なキャンペーンを展開する。
  • 企業はローカル・モバイルに投資を加速:Balihooの調査によると、400ブランドの経営者は、ローカル・モバイルの投資を増やそうとしている。Berg Insightによると、現在、ローカル・モバイルはモバイル広告全体の8%に過ぎないものの、2017年には33%まで増やすという。
  • ローカル・モバイルはコンバージョンレートが高い:モバイル広告全体のクリックスルーレート(CTR、表示された広告のうちクリックすう確率)は、0.4%という。一方で、Verdeによれば、ローカル・モバイルの場合、CTRは倍になるという。
  • ローカル・モバイルはスマホに特化した技術でない:ローカル・モバイルは、スマホだけに限らず、タブレットなど他のデバイスにも応用できる。とくに、最近、ショッピングプロセスを通じて、スマホ・タブレットの果たす割合(スマホで検索して商品を買うなど)があがっている。スマホ・タブレットの”ファーストサーチ”としてのローカル・モバイルは重要。

ローカル・モバイルのメリット・デメリット

すべてをうのみにできないけど、これはだいたいあっていると思う。とくに、CTRの改善について、やはり、ユーザが検索するのは当たり前だけど”必要な情報が欲しいから”、そして、”ロケーション”というコンテクストが加わることによって、ユーザにとってより有用な情報になる可能性は高いと思う。たとえば、自分が近くにATMがないかなと思って、スマホ・タブレットでATMと検索する、そして、位置情報をもとに一番近くのATMを教えてくれたら、それはやっぱり便利だ。

 一方で便利な反面、やっぱり、個人情報の話は避けて通れないだろう。位置情報をクッキーのように扱うのはとても合理的なやりかただと思う。でも、それが万が一、流出したら、その被害は大きい。という意味で、言うまでもなく、厳重な管理が必要だと思う。

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 スマートフォンにおいてどう位置情報をビジネスに活かすか、という点については、去年上梓させていただきました「図解スマートフォンビジネスモデル 事業戦略と収益構造」の第4章 位置情報を活用したスマートフォンビジネスモデル において触れておりますので、ぜひ、ご参照ください。

また、スマートフォン・タブレットが今度増えるとどうなる?という話では、先週オープンした個人投資家向け投資アイデアプラットフォーム”Longine”に、「次のスマホ」と「スマホの次」:恩恵を受けるのは誰か? パート1として書かせていただきました。1記事ごと、月額とも有料ですが、こちらも、ぜひご参照ください。

新しいビジネスをつくる

6月 2nd, 2013 | Posted by admin in テクノロジー | 経営 - (新しいビジネスをつくる はコメントを受け付けていません)

最近、思うこと、新しいビジネスを作るのは難しい。

たとえば、”世の中を変える誰も作っていない製品をつくる”ということでビジネスをスタートする。

これはこれで素晴らしいし、こうした元気な企業がたくさん出てこないと日本は活性化しない。
だから、もっともっと、こうした企業が出てくるべきだ。

ただし、こうした会社がすべてがすべてうまくいくかというと、そうとは限らない。

特に難しいのが、”世の中誰も作っていない製品”ということ。

誰も作っていない製品というのは、やや穿った見方をすれば、市場性がないから大企業が作っていない製品ともいえなくはない。もちろん、その市場をまったく大企業が見逃しているというケースもある。

だから、意気揚々と新製品を出したとしても、それがすぐにユーザに受け入れられるまでそれなりに時間がかかる。とくに、企業向けソリューションの場合、得てして企業は保守的なので、新しい会社と付き合うリスクを取るよりも、むしろ、これまでの実績のある会社と付き合う場合が多い、だからといって、大企業はリスクを取れと言われても、そうはいかないだろう。これはこれでしょうがない。

そう、研究の世界では、新しいこと、誰もやっていないことが価値だけど、ビジネスの場合は、新しいから売れるとは限らない。で、最初は、絶対売れると思って、かなり大きい数字を入れた事業計画書が絵餅になり、”こんなはずじゃなかった”と責任のなすりつけをする。これもよくあるパターン。

ただ、往々にして、今は新しくても5年後に、みんなが使うようになるというのは結構多い。身近なところでは、スマホ。5年前は、一部のギークしかつかわなかったけど、5年後、誰もが使うものになった。20世紀初頭の電気、1990年代のインターネットも同じ。

というわけで、新しいビジネスをどう作るか、自分の結論は、”信念をもって堪える”です。ビジネスの話をしていて、経営者は自分の立ち上げたにもかかわらず、ダメと否定する場面がたまにある、でも、これはよくない。まわりからどんなに”こんなの流行るわけがない”と否定されようとも、ブレずに信念を貫く、これが一番重要なんだと思いました。

Facebook HOMEをアンインストールした理由

5月 31st, 2013 | Posted by admin in テクノロジー - (Facebook HOMEをアンインストールした理由 はコメントを受け付けていません)

Facebook HOMEというアプリがある。このアプリがリリースされる前は、”Facebook Phone”とも言われていて、フタを開けてみると、”HOME”としてスマホをFacebook化するアプリが2013年4月にリリースされた。

自分もワケあって2カ月近くNexus7にインストールして、使ってみたけど、結論からいえば、イケてない。

なぜ、イケてないか? おそらく、それは自分のデジタルライフの中のFacebookに占める割合が低いからだと思う。

ざっくり言って、自分のデジタルライフ(=PC,スマホ、タブレットでネットを使う時間)は、30%:ウェブ(ブログ、ニュース、まとめサイトなど)、30%:メール・チャット、15%:動画、10%:Facebook、15%:その他、で、だいたいFacebookは1割くらいの比重でしかない。おそらく、これは今後も変わらないか、もしくは、また別のSNSが出てくれば、その割合は下がると思う。

一方、Facebook HOMEのアプローチは、スマホ・タブレットの”Facebook化”で、ホーム画面から何から何まですべてFacebookが中心となる。おそらく、デジタルライフのうち、Facebookの占める割合が50%以上であれば、そこそこ使えると思う。だけど、自分の場合、Facebook Messangerは使うけど、あくまでも、メールはGmailを使っているし、ウェブ閲覧もRSSリーダーとかFacebook以外のモノを使っているので、すべてを”Facebook化”されて、それ以外のアプリへの移動(使ってみるとわかるんだけど、Facebook HOMEでは他のアプリに移動するのが結構手間がかかる)に手間がかかるのでは、やっぱり、使いにくい。

かつて、3つのイノベーションで“復活”するフェイスブック、その収益力は本物か?にも書いたように、自分はFacebookのとくにモバイル領域でマネタイズする姿勢は、広告が多くてうざいと言われようが、正しい方向性だし、他の企業にとっても、このモバイルのマネタイズ化は学ぶところが多いと思う。たしかに、Facebook HOMEはイケてない、だからといって、Facebookは終わったというわけではない。むしろ、失敗を重ねて、さらに良くする(少なくとも他のアプリのとの連携ができれば、少しは使いやすくなると思う)、今後のFacebookの展開が楽しみです。

”アマゾンのショールーム化”問題をどう解決するか

5月 29th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー | 経営 - (”アマゾンのショールーム化”問題をどう解決するか はコメントを受け付けていません)

ヤマダ電機、全役員を降格処分 「アマゾンのショールーム化」避けられない?、この記事を読んで、思ったこと。

各地で発生するアマゾンのショールーム化

ヤマダ電機に限らず、最近、この手の”アマゾンのショールーム化”の話をよく聞く。典型例は、書店だ。

まず、本屋にいって、立ち読みして、よさそうだったらアマゾンで注文する。条件を満たせば、送料も無料だし、家まで宅配してくれるし、クレジットカードで決済すれば、クレジットカードのポイントもたまる。なので、あえて、街の本屋で買わずに、アマゾンで買う。

自分の知っている会社でも、この”アマゾンのショールーム化”問題に手をやいているところもあって、この問題を抱えている企業・小売店は結構多いと思う。

ショールーム化をどう解決するか?

で、どうやってこの問題を解決するか?

最もわかりやすいのは、”価格勝負”、アマゾンより安く販売する、価格.comの価格ランキングは、だいたいアマゾンが一番安いけど、たまに、それを上回る価格でアピールする小売店もある。ただ、これはおそらく長続きしない。というのは、アマゾンは大量に仕入れる分だけ、それだけディスカウントが効いているわけだし、闇雲に価格勝負を挑むと、結局、消耗戦になり、勝てない。

もう一つ考えられるのは、”ショールームに徹する”。たとえば、本屋を全部立ち読みOKにして、そして、QRコードなりでタッチすると、アマゾンのアフィリエイト経由で、商品を購入できる仕組み。ただ、アフィリエイトの料率も年々下がっており(今年6月からは書籍一律3%)、店舗の賃料、従業員・パートの賃金、などのコストを回収するのは、よほど売り上げをあげるか、コストを下げるかをしないと難しく、これもそれほど現実的じゃないと思う。

となると、残るのは、店・定員に対する愛着心なんだと思う。たとえば、この店にいけば、カメラのことが詳しい店員がいる、あの店はディスプレイの仕方が工夫されている、あるいは、あの店で買うと壊れたとき修理してくれる、など、店・店員が”スペシャル”であると、アマゾンもすべては顧客のためにという経営理念を標榜しているけど、さすがに、物理的に店をもって、店員を抱えているわけではないので、これは”物理”店に分がある。これはコーヒーと同じで、150円でマックでコーヒーは買えるけど、あえて、倍の300円以上出してスタバに行くのは、店・店員が”スペシャル”だから。

コーヒーと家電量販店とは、仕入れ条件などがあるので、単純には比較できないけど、ただ、スペシャルな店・店員に惹かれて、それにお金を払うのは、世界中どこにでもあるのだと思う。

理学と工学

5月 15th, 2013 | Posted by admin in テクノロジー | 経営 - (理学と工学 はコメントを受け付けていません)

最近思うこと、同じ”理系”であっても、理学と工学は結構違う。

理学の代表は物理、数学で、世の中の真理・法則を探求することだと思う。たとえば、宇宙はいつできたか、とてつもなく難しい問題だけど、ある仮説を提示して、その仮説を裏付ける様々な状況証拠を一つ一つ積み上げながら、ロジックをくみたてて、証明する。コンサルタントに理学部出身が比較的多いのも、フィールドが違えど、ロジックを組み立てて、仮説を検証するという点では、やってることは結局同じなのかもしれない。

一方、工学の場合は、どちらかというと、”こんなん、作りました”というアプローチ。たとえば、ロボット作るという場合、もちろん、仮説を立てて、それを証明するのも大事だけど、それ以上に、失敗を恐れず、ひたすら、改良に改良を重ねて、誰も作っていないものを作る。何もないところから、新しいものを生みだす、そういう点だと、ベンチャー企業経営に近いかもしれない。

最近思うことは、理学的な分析思考がパーフェクトながらも、工学的なフロンティアマインドを持ち合わせている人は、ほとんどいないということ。そう、一人ではできない、だから、チームを作って、それぞれの特性を引き出す。当たり前なんだけど、その当たり前の大事さを気づきました。

Googleファイバーという戦略

4月 10th, 2013 | Posted by admin in テクノロジー | 経営 - (Googleファイバーという戦略 はコメントを受け付けていません)

Googleが、米国のカンザスシティに続いて、テキサス州オースティンにも自社のブロードバンドサービス「Google Fiber」(グーグルファイバー)を提供するという。はたして、このGoogleファイバー、今後ビジネスとして大きなトレンドになるか?

Googleファイバーとは?

 Googleファイバーとは、言わずと知れたGoogleが提供するFTTH(Fiber To The Service)サービス。家庭に光回線を提供することで、高速インターネットアクセスを実現するサービス。日本でいえば、NTT東西のフレッツ光に相当する。1Gbpsをフルに使うことはほぼないだろけど、たとえば、5Gバイト(映画1本くらい)であれば、5秒で転送が完了するくらいの、すごく速い速度。(理論的は5秒であるものの、実際のところは、セッションの確立など、もう少し時間はかかります。)

Googleファイバーのビジネスモデル

いうまでもなく、1GBpsの高速回線をすべての家庭にタダで提供していてはビジネスとして成立しない。というわけで、Googleファイバーのビジネスモデル(収益を上げる仕組み)は、月額での料金徴収であり、料金プランは(1)フリーインターネット(300ドルの初期費用で、帯域はダウンロード5Mbps/アップロード1MBpsなものの月額無料)、(2)ギガビット(初期費用300ドル、月額費用70ドルで、帯域はダウロード・アップロード1Gbps)、そして、(3)ギガビット+TV(ギガビットに加えてのGoogleTVサービスなどの追加で月額120ドル、初期費用300ドル)の3種類。

Googleファイバーはビジネスとして成立するか?

 一般的にテレコムビジネスは、大規模な資本投下が必要なビジネスと言える。それはやはり、サーバを借りて新しいネットサービスを始める、あるいは、フリーランスのプログラマを集めてソフトウェア会社を作る、とはいかずに、ある地域(Googleファイバーでいえば、カンザスシティ、オースティン)の一定区域をリーチするために光ファイバーを敷設もしくはすでに敷設してあるファイバーを借りる、くわえて、そのファイバーからネットに接続するまでのコスト(トランジット)を負担する必要がある。そして、その接続にかかる費用は顧客の多寡を問わず発生するコスト(固定費)であり、その固定費を上回る売上(ファイバー加入者数)が必要になる。

 というわけで、結局のところ、テレコムビジネスとしては、同じ設備を全国展開して、お客さんを増やす戦略であり、現状の2か所だけでは、ペイするのは難しいと思う。もし、Googleではないスタートアップ企業がGoogleファイバーのようなサービスを展開したら、収益性のあるビジネスに育てるのはとても難しいと思う。

なぜ、 Googleはファイバービジネスを展開するか?

 なぜ、Googleはファイバービジネスを展開するか?やや一般的な言い方だけど、それはGoogleとネットとが“補完材”の関係にあるからだと思う。補完材は経済学の考え方で、ある財を保管する材、その代表例は、車とガソリン。当たり前だけど、車はガソリンなくして走ることはできない、だから、ガソリンは車を走らせるために必要で、車を補完するモノ、だから、補完材。これはネットとGoogleの関係も同じで、ネットでの利用が増えれば増えるほど、Googleで検索する回数は増える。すなわち、ネットが大きくなればなるほど、Googleの収益機会が増える。2か所にファイバーを提供するからといって、すぐにはネットユーザが増えるというわけではないけど、やっぱり、“補完材”の一助にはなると思う。ただ、全米一斉もしくは世界一斉にGoogleファイバーを展開したら、いくら財務に余力があるグーグルといえどもたまったものではない。だから、厳しいセレクションプロセスで慎重にファイバー展開地域を選び、展開している、言ってみればGoogleらしくないやり方を貫いているとも言える。

おわりに

 10年前ならいざ知らず、最近では、スマートフォン・タブレットのパケット放題で、家にいなくても常時ブロードバンド環境が進みつつある。そのなかで、本当に家庭に1Gbpsの回線が必要かと言えば、必要な家庭はそれほど多くないと思う。自分が思うに、Googleの幹部もこの問題に悩んでいると思う(すくなくとも自分がマネジメントだったら、一番悩む)。それで、どうするか?結局のところ、家庭に1Gbpsが必要なモノを作り出すしかない(例:TV)と思う。それができるかできないか、これこそがGoogleファイバーが普及するかしないかの分岐点だと思う。

追記(20130410)

フレッツ光の記述に誤記があったので訂正しました。

プログラミング科目を必須にすべき3つの理由

4月 7th, 2013 | Posted by admin in テクノロジー | プログラミングを考える | 経営 - (プログラミング科目を必須にすべき3つの理由 はコメントを受け付けていません)

プログラミングを高校・大学の必須科目にすべきという話があるけど、自分はこれにもろ手を挙げて賛成です。

もちろん、高校・大学でちょっとプログラミングを勉強したところで、すぐに企業に入って役に立つというわけでもないけど、次の3つの理由からとても大事と思います。

必須にすべき理由その1:目に見えないシステムを理解する

 システムを作る作業は基本的には建築現場の土木工事に似ている。まず、どんな建物ができるかきちんと設計し、予算を割り当てて、リソース(自社ですべてできる場合は少ないので、場合によっては外注)を確保して、スケジュール通りに仕上げる。ただし、土木工事と違う点は、土木工事は目の前の建物が建っているのはわかるのに対して、システムの場合は、目に見えないこと。そして、目に見えないから、”こんなシステムすぐできるだろう”のように無茶をいう経営者もそれなりにいる。もちろん、あえてシステムを知らないことで自由な発想を生み出すことができるのも事実だけど、目に見えないシステムをプログラミングを通じて理解するのはとても重要だと思う。

必須にすべき理由その2:プログラミングの裾野を広げる

 高校・大学でプログラミングをやったからといって、全員がシステム会社に就職するわけでない。たとえば、自分は大学時代、慶応湘南藤沢キャンパスで6年間過ごして、最初の1年は情報処理のクラスでプログラミング(C言語)が全員必須だった。そして、SFC生全員がシステム会社に入ったかというと、もちろん、そんなことなく、銀行にいったり、公務員になったり、商社にいったり、プログラミングと全く縁遠い業界に入った卒業生も無数にいる。でも、かつて、裾野の広さと500 startupsというエントリで書いたように、ニュージーランドのラグビーのようにプログラミングの裾野を広げることは、次の新しいベンチャー、産業を生みだす点で大切。

必須にすべき理由その3:問題切り分け力をつける

 当たり前だけど、コンピュータは人間が指示したことしか実行しない。そして、プログラミングは、やや抽象的な言い方だけど、”コンピュータに指示する手続き”ともいえる。そして、コンピュータにプログラミングによって”指示”しても、自分の思い通りに行かないことが多々ある、いわゆる、”バグ”だ。それで、どうやって、バグを見つけて、正しい動作にするか、それが”問題切り分け力”だと思う。不具合の原因をあらゆる可能性から検討して、問題解決のあたりをつけて、そして、修正する。自分も最近コンサル案件でプログラミングの手伝いをすることがあるけど、結局、プログラミングとは、問題切り分け作業の連続だと思う。そして、言うまでもなく、この問題切り分け力は、プログラミングだけではなくて、営業、製造、管理、経営などあらゆる場面に応用が効く力で、こうした力はプログラミングによって涵養される要素が大きいと思う。

最後に

 これまでシステムエンジニアの採用を経験したことがあって、そこからわかったこと。それはシステムエンジニアには2つのタイプがある。一つは、あるプログラミング言語に特化して、それを極めるタイプ、今だと、Javaのフレームワークなどそれなりに需要があるので、特化タイプもマーケットはある。一方で、プログラミング言は、言語体系は違えど、考え方(制御構造、データの持ち方、アルゴリズムなど)は同じなので、あるプログラミング言語をマスターして、それを別のプログラミング言語に応用できるタイプ。企業とくに小さい企業では、後者の方が柔軟性があるので、こっちの方がニーズがある。そして、プログラミング科目必須になって、後者のような柔軟に応用ができるタイプがたくさん育てば、これほど日本全体にとってプラスなことはないと思う。